野生種がある北アフリカからカスピ海南岸にかけてが原産地と推測されていますが、はっきりしたことは分かっていません。 なにしろ5000年以上前からチグリス・ユーフラテス川流域で栽培されていましたので。 その後、古代エジプト、ギリシア、ローマなどで栽培され、中国にも今から2000年前には渡っていたようです。 まさに古代文明を支えた栄養源だったわけです。 日本に渡来したのは奈良時代で、インド人の僧ボダイセンナが中国を経て渡来した時に持参し、 それを日本の遊行僧の行基(ぎょうき)という人物が各地に紹介したという話です。
そら豆は漢字では空豆とか蚕豆と書きます。そら豆の莢(さや)は、上に向かって(初夏の青空に向かって)まっすぐに伸びるので、「ソラマメ(空豆)」という名前が付けられたと言われています。 また蚕(かいこ)が繭(まゆ)を作る頃に美味しくなるため蚕豆と書くとも、莢の形が蚕に似ているためとも言われていますが、はっきりとしたことは解かっていません。 また、大粒のものは「於多福(おたふく)豆」とも呼ばれ、日本各地には色々な呼び名が残っています。
今回の「宮城の食材」の舞台になるのは、宮城県柴田郡村田町小谷地区です。仙台の市内から車で約一時間かけると、緑豊かなその農村地帯に到着します。小谷地区では現在85件がそら豆を生産していますが、忙しい中お話をお伺いしたのは、この地区で農業を営み17代目となる「高橋光男」さんです。
生まれた時からそら豆を生産していたという高橋さんのお宅では、「あまえくぼ」と「打越」の2種類を生産していますが、その中でも3年前から栽培を始めた「あまえくぼ」は宮城の農業試験場で開発された品種で、今は村田の特産品に指定されているそら豆です。全国のそら豆が並ぶ築地でも「あまえくぼ」は有名ブランドとして地位を確立しています。
そら豆の栽培は例年10月後半に種付けをするとの事ですが、ちょっとした気候の変動にも左右されやすいそうで、大雪が降るとだめになるし、だからと言ってある程度の寒をあてないと出来の良いそら豆には育たないそうです。そんな気苦労の多いそら豆栽培なのにもかかわらず、昔から今に掛けても盛んに栽培されている理由を、「ここの盆地のような土地がそらまめ栽培に適していると、昔の人は見抜いたんでしょうね。」と説明してくれました。以前は、南から北上するそら豆栽培前線の北限が村田町でしたが、品種改良の末現在は北海道でも栽培されているそうです。
実際に栽培している畑にお邪魔すると、そこは辺り一面真緑に覆われた別世界。圧倒的な迫力の色彩は、正に健康的な生育状況を表しているようでした。
今はまだまだ小さい莢が付いているだけですが、今年も生育は順調のようで、例年通り6月10日頃に出荷を始められるとの事でした。でも、そら豆の旬は短く約2週間で出荷は終わってしまいます。もっと長い事楽しみたいのに残念ですね。
その独特の香りと味わいから敬遠される事も多いそら豆ですが、最近は料理のバリエーションも色々と増え、出荷も以前と比べると右肩上がりのようです。天ぷらやパスタの具に使われる事の多くなったそら豆ですが、「塩茹でした熱々のそら豆をビールのつまみでいただく」、この初夏の風物詩が一番でしょうか。そのほかにもそら豆の美味しい食べ方は考えられているようで、村田町物産交流センターでは色々なそら豆を使った品々が並んでいます。一例を挙げると、「そらまめうどん」「そらまめ羊羹」「そらまめサブレ」等々。さらに、おいしいそら豆をお腹いっぱい食べたいなら、6月6、7、8日に此処で行われる「そら豆祭り」に行きましょう。ただしそら豆がなくなり次第、毎日イベントは終了とのこと。是非お早めに。
問い合わせ:村田町物産交流センター
TEL 0224-83-5505