仙台から北へ車を走らせ、豊かな田園風景が広がる国道346号線上の美里町内に、農産物直売場「花野果市場」がある。
町内の農家の方々が丹精込めて作った新鮮な朝採り野菜をはじめ、切花や鉢花、漬物等の加工品が豊富に顔を揃え連日賑わいを見せている。市場内には、代表の伊藤恵子さんと娘さんの伊藤真智美さん親子が中心となって切りもりする「農家レストラン はなやか亭」がある。
メニューには「おにぎり定食」や「すいとん定食」等が並び、新鮮で旬な野菜をふんだんに使った、おふくろのやさしい味わいでもてなしてくれる。使われている野菜の全てが伊藤家で栽培されたもので、だから新鮮なのだとうなずける。中でも人気なのは、親子が真心込めて作るしそ巻きである。これだけを求めるため、遠方からも多くの人が訪れる。
この地方では古くから常食としてきたしそ巻きは、砂糖などで味付けした味噌をしそで巻き、油で揚げるのが一般的であるが、作り方はそれこそ千差万別、まさに各家庭のレシピが存在する。近年ではつなぎの粉を米粉にするなど、現代の嗜好に合わせた作り方も出てきているそうだが、はなやか亭のしそ巻きは、伊藤家代々に伝わる味を頑なに再現している。
初めて口にすると、力強くとても濃厚な味に驚くに違いない。噛み締めると、胡桃粉の素朴ながらも滋味に富んだ風味が広がりを見せる。濃厚ながらも決して重く大味にならないのは、隠し味に使われている七味のおかげであろう。また、一日寝かせた味噌を使うなどのこだわりで、とてもこなれた味わいがする。親子が語る「自分達の作ったものを皆に食べて頂くことで、新たな出会いが生まれる。それをこれからも大切にして行きたい。」との思いが込められた、とても温かい豊かな味わいのしそ巻である。